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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

輝星とシアとチョコ

ある日、輝星花吹だか誰だかは忘れてしまったがこんな話を聞いた。
それは

「人間は2月のとある日に意中の相手にチョコをあげる風習がある」

というもの。
すなわちバレンタインのことである。
なお、輝星は普通このチョコを渡すのが女性から男性へというのを知らずして

「よーし、じゃあシア様にチョコをあげよう」

という考えへと行き着いたのであった。

そしてまたある日のセイグリッド。
上機嫌な輝星はサフィに言って城の厨房を借りようと考えながら、自前でチョコを用意して城へと向かう。
なお、サフィはやって来た輝星がチョコを持っていることにすぐに気付いて察したのか

「ああ、今厨房は空いてるから大丈夫よ」

厨房なら空いていると言って、遠回しに使うことを許可してくれた。
輝星はそれにありがとうとすれ違いざまに言って厨房へ。

「えーっと確か…」

誰もいない厨房で、輝星はあちこちから調理器具の他にいくつか果物なども拝借した。
用意したのはボウルが2つにケーキ用の型にトレイ、湯を沸かすための鍋。
それ以外は、飲んだことのないブランデーという酒を用意した。

「まず湯を沸かす必要があるね」

そう言って輝星は他の王子よりも小さい体で流しに立って鍋に水を入れ、コンロに火を入れて湯を沸かす。
セイグリッド城の厨房のコンロは魔法で火を起こすらしく、輝星が少し魔力を送っただけであっという間に強火で点火した。
そして湯を沸かしている間に、輝星はまた別のボウルに持ってきたチョコを割って入れる。
なお、持ってきたのはビター系の苦いチョコ。
なぜだか分からないが、シアは苦めのチョコを好む気がしたからである。

「あわわ、お湯沸いちゃった」

やけどしないように注意しながら、何も入っていいないボウルに沸かした湯を注ぐ輝星。
その手つきは、どこか手慣れた感が否めないがそれはサフィやアルガティアからある程度の手解きを受けたからだろう。

「湯せんってたしか…こうだよね」

そう言って輝星は湯の入ったボウルの中にチョコを割って入れたボウルを静かに入れてヘラでかき混ぜる。
この時、湯が外に飛び散らないようにしなければならないので輝星はかなりゆっくりしたペースでチョコをかき混ぜていく。
その際にブランデーを数滴だけ入れたのだが、その香りで輝星はなんだかほわほわとした気分になりかけた。

「いけない、早く溶かし切らないと」

だがすぐに我に帰り、輝星はチョコを溶かし切った。

「次はこれを型に…って下敷きとココアパウダー準備してなかったんだった」

次は溶かし切ったチョコを型に流し込むのだが、ここで輝星はココアパウダーとトレイに敷くクッキングペーパーのようなものを忘れていたので、チョコがまた固まる前に急いで準備する。

「あーあ、少し固まり始めてる…急がないと」

輝星がココアパウダーとクッキングペーパーもどきを用意し終えた時には、湯せんで溶かしたチョコはまた固まり始めていた。
これは急がないとと、輝星はトレイにクッキングペーパーもどきを敷き、型をセットしてチョコを流し込む。
使った型は丸型だが、輝星はあまり型にこだわってはいないので気にしていない。
溶かしたチョコを流し込み終えると、ココアパウダーを振りかけて型を外す輝星。

「これで完成…っと」

形こそは整形してないので少々いびつだが、シアにあげるだけなら十分すぎる出来だ。

「ああそうだ、調理器具片付けないと」

輝星はもちろん使ったものを片付けることも忘れない。
使ったものは片付けるのは当たり前だからだ。

なお、その頃何も知らないシアは何をしているのかというと

「ふうん…」

チョコを意中の相手に渡している者達を面白半分に見ていた。
一応サフィからもらいはしたのだが、ほんの少ししかくれなかったので物足りない様子。
するとそこへ

「シア様ー」

不意打ちで輝星がやって来たのであった。
しかもその手には輝星が自作したと思わしきチョコがある。

「どういう風の吹き回しなのかしら?」


あえてチョコに気付いてないふりをして輝星にそう聞くシア。
すると輝星は持っていたチョコを差し出して

「どう言ったらいいのか分かんないけど、これシア様にあげる」

チョコをあげると言ってきた。
シアはそのチョコを見て最初は訝しんで受け取ろうとはしなかったが、輝星ならと思って結局受け取って食べる。
味はビター系の苦味が強いもので、しかも少々くどい苦味だったが

「いい味ね、どこで習ったの?」

いい味だと輝星を褒めてどこで習ったのかを聞く。
それに対して輝星は

「うーんと、秘密」

と言ったとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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