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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

ゴルダと黄色い子もといルナリア

その日、ゴルダは朝から街の方で依頼を受けており、それ自体は昼には終わったのだが、買い物やら何やらをしていたため、結果的に帰って来たのは夜。
荷物を半分アルガントに持たせ、家の扉の鍵を開けると、ゴルダは家の中に何か違和感を感じた。
その違和感とは、朝出た時には感じなかった何者かの気配。
家の明かりをつけ、腰に装備していたナイフに手をかけながらその気配のする方へ行くゴルダ。
気配は、ゴルダの自室の方からしていた。
暗視を利かせ、ゴルダが後ろ手で部屋の明かりもつけるとそこには

「おにーたん」

謎の黄色い毛の竜がベッドに座っており、こちらに気付くと真っ直ぐに向かって来て抱きつく。
初対面と思われるこの竜を見た瞬間、ゴルダの記憶の引き出しからこの竜に関する記憶がわずかながら出てきた。

「お前、何処かで会ったことが?」

「何のこと、おにーたん?」

だが、黄色いこの竜は一切合財の記憶が無いらしい。
するとそこへアルガントが入って来て

「空き巣!」

と叫んでその黄色い竜に三日月型の何かを投げつけた。
だが、黄色い竜はそれを避けるのではなく掴んでポキンと折った。

「空き巣じゃないもん」

黄色い竜が少しむすっとした顔で言ったので、ゴルダは2人を掴んで居間の食卓の椅子に座らせる。
ゴルダはそのまま2人に大人しくしてろと言い、買ってきた物を冷蔵庫や戸棚にしまってから自分も座った。

「お前は記憶が無いかも知らんが、俺には若干あるらしい。お前の名前は確か…ルナリアだった。ああそうだ」

「記憶はないけど、名前はそれでいいの」

ゴルダはこの黄色い竜の名前をルナリアと言い放つ。
黄色い竜改め、ルナリアは自分は記憶は無いが名前はそれでいいと答える。
と、ここでルナリアはゴルダに

「何でおにーたんには私の記憶があるの?」

なぜ自分の記憶を持っているのかを問う。
それに対してゴルダは首を横に振って、分からんがとにかくあると答えた。
ルナリアはどこか納得いかないような顔をしつつも

「実はさっき抱きついた時に勝手におにーたんと契約しちゃった」

先ほど抱きついた意を教えた。
ゴルダはそれに対しては

「そんな方法もあるのか、しかも一方的かつ強制契約とは…まあいい」

そんな方法もあるのかと答えて夕食の支度を始める。
ルナリアが手伝うと言ったが、ゴルダはルナリアにアルガントを見ているよう頼む。

「むにー?」

「むー」

アルガントを見ていろと頼まれたルナリアは、手始めにアルガントの前に座って頬を揉む。
それに対してアルガントは若干嫌な顔をしたが、やめろというような仕草はしなかった。
それで調子に乗ったのか、ルナリアは今度はアルガントの角に触れる。
角に触れた瞬間、どういう原理でかは分からないがアルガントはものすごいくしゃみをした。
そのくしゃみのせいで、ルナリアは数十秒固まっていたがどこからか出したティッシュで自分とアルガントの顔を拭く。

「むー」

「何か不満?」

「~~~」

不満そうに唸るアルガントに、ルナリアは何か不満でもあるのかと聞く。
するとアルガントは、ルナリアが理解できない言語で何か言い出す。
だがルナリアには、それが呪いのようなものだとすぐに分かったので耳を塞ぐ。
耳を塞がれたアルガントは、ちぇっという顔でそっぽを向く。

「何よー」

ルナリアもアルガントの態度に嫌気が差し、こちらも完全に目を離してしまう。
そして、ゴルダ部屋にこっそり入ったルナリアは武器を保管しておくウェポンロッカーを発見。
鍵は掛かっておらず、簡単にロッカーの扉は開いた。
その中には、様々な種類の武器が手入れされた状態で保管されており、その中でルナリアの興味を引きつけたのは

「これ50口径かな?」

ゴルダの愛用している銃の1つである50口径のマグナムピストルだった。
精度を最低限保ちながら反動を抑え、威力もそこそこに引き上げられたこのマグナムピストルは魔法技術が無ければ改造できない代物。
ただ、欠点としてメンテナンスを怠ると普通の物よりも早くガタが来るのでその辺は注意しなければならない。

「重いー」

安全のためかマガジンは抜いてあったが、それでもずっしりと来る重さを感じることができた。
次のを試そうと、ルナリアはそのマグナムピストルを戻して今度は手裏剣を手に取る。
素材はミスリルだろうか、投擲者の魔力に応じて飛距離や精度に威力が変わるようだ。
ルナリアは試しにその手裏剣を投擲した。
だが、投擲した瞬間。ルナリアは投擲したことを後悔する。
なぜかと言うと、機嫌を直したアルガントがたった今部屋に入って来てしまったからだ。
だが、ただ後悔するルナリアではない。
咄嗟の判断でその手裏剣を空中で静止させ、回収した。

「危なかった」

「ふぇ…」

この後は、何事もなかったかのように食事を済ませ、3人は風呂に入ることに。
ルナリアとアルガントを先に湯に入らせ、ゴルダは無心で体を洗う。
そして、体を流そうと湯船の方に向き直った途端。

「おにーたんは無いのー?」

ルナリアにあるはずのものが無いと言われ、ゴルダは

「持病の薬の副作用でとっちまったよ」

とだけ答え、それ以上は何も聞くなと目で言った。

そして、風呂から上がって寝る時間。
ゴルダを真ん中に、左にアルガント、右に少し離れてルナリアが寝ることになった。
ルナリアは少し不満そうだが、隙あらば抱いて寝るつもりではいたようだが、結局そのままだったという。
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小説(交流) |

シスイの日常-誰かと会うのも悪くない

日の入りも程よく遅くなって来た春中旬の夕刻。
沈んだ日は、ドランザニアとアストライズの国境を隔ててそびえる山のアストライズ側へと沈んでいく。
そんな山の中で、シスイは最近試行錯誤の末に覚えた木炭を作るために手作りの窯に木を投げ入れていた。
シスイの住んでいる場所は、異常に湿度が高いのでただの吸湿材にしかならないように思えるが、その辺もちゃんと考えている。

「こんなものでしょ」

木炭にする木が全部入っているのを確認し、シスイは窯に火を入れる。
火はあっという間に燃え上がり、木炭になる木が燃え出す。
気付けば、日は完全に沈んで辺りは闇に包まれ始めている。
一応闇竜なので、暗視はできるもののシスイは松明を取り出して火をつけ、明かりとした。

「暇ねえ、誰か来ないかしら」

この台詞に違和感を感じるかも知れないが、シスイの絶対に誰も信用しないという鉄則は、崩れつつある。
それは、シスイがエルフィサリドと付き合うようになってから、徐々に自分の考えが馬鹿馬鹿しくなっていき、今では初対面の相手に対しては多少警戒はするものの失せろとは言わなくなったからだ。
なので、誰でもというわけではないものの、現在は他者と会うことに抵抗はほとんどない。

「あら?」

ここで、シスイは何者かの気配を感じてその方を見る。
すると、苔むした木と木の間からエルフィサリドに話だけは聞いていたアルカトラスが佇んでいたのだ。
アルカトラスは無言でシスイを見据えており、何か言いたげではある。

「こんなところでひっそり住んでいるとはな」

「意外といいものよ」

アルカトラスにこんなところに住んでいるのかと言われ、シスイはいいものよと返す。
そんなシスイの返事を聞き、アルカトラスはふむと頷いて

「ここから離れる気は無いか?」

この山を出る気はないかと聞く。
その問いに対して、シスイは横に首を振って

「ないわね、どうして?」

なぜ出ないのかと聞いた理由を聞く。
それにアルカトラスは

「気にかかることがあってな、それは…いや、言わなくともよいか」

とだけ答えてそれ以上は濁す。
シスイはそれに何よと言って窯の様子を見る。
木炭は出来上がりつつあり、タイミングさえ間違えなければ問題なさそうだ。
アルカトラスはその様子に苦笑いしながら

「また来るとしよう」

と言って帰ってしまう。
シスイは、なんだったのかしらと思いながら窯を眺め続けていた。
やがて木炭は出来上がり、シスイは窯の火を消してそれ以上焼かないようにした。

「また誰か来ないかしらね」

松明の音と共に、夜は過ぎて行く。

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